非認知的スキル

「幼児教育の経済学」

という本があります。元々の書名は

Giving Kids a Fair Chance.

というもので、ノーベル経済学賞を受賞したジェームズ・J・ヘックマンという学者の書いた本です。

ヘックマン教授は、世界各国で行われた様々な研究結果を基に、人生で成功するには、認知的スキルだけではなく非認知的スキルも大切であると言っています。

認知的スキルとは、IQテストや学力検査などによって測定できる能力。通常私たちが「学力」と考えているものですね。

非認知的スキルとは、肉体的・精神的健康、根気強さ、注意深さ、意欲、自信といった学力以外の要素。

ヘックマン教授はさらに、認知的スキルも非認知的スキルも幼少期に発達し、その発達は家庭環境によって大きな影響を受けると言っています。

教授は、「ペリー就学前プロジェクト」という、1960年代にアメリカで低所得のアフリカ系の家庭の子供を対象に実施された実験を紹介しています。この実験では被験者を2つのグループに分け、一方のグループには就学前の幼児に対して毎日二時間半ずつ教室で授業を受けさせ、さらに週一回は教師が家庭を訪問して90分の指導をしました。指導内容は非認知的スキルを育てることに重点を置き、子どもの自発性を大切にする活動を中心としていたそうです。この教育を30週間行ったうえで、終了後、この教育を受けた子供と、受けなかったもう一つのグループの子供を40歳まで追跡調査したそうです。もし、現在こんな実験を行おうとしたら人道的観点から反対の声が上がりそうです。1960年代だからこそできた実験でしょうね。

さて、その結果ですが、教育を受けた子供たちのIQは、実験当初は受けなかったグループよりも高くなったんですが、終了後4年後には差はなくなったそうです。一方、非認知的能力などの効果は継続し、その結果、就学前教育を受けた子供は受けなかったよりも学校へ行っている率が高く、その結果成績もよかった。40歳の時点では、学歴、収入、生活保護受給率、逮捕者率などで両グループの間に大きな差がついたというのがこの実験の結論になっています。

ヘックマン教授は経済学者ですので、その理論をもとに、国は恵まれない子供の幼児教育に投資することによって、犯罪を減らし、労働者の生産効率を向上させることができるという政策論を展開しています。教授はまた、幼少期に認知力や社会生や情動などの能力を幅広く身につけることは、その後の学習をより効率的にし、それによって学習することがより簡単になり、継続しやすくなると言っています。国にとって、幼少期の子供たちの教育に投資することは後になってから投資するよりも投資効率がいいということです。

この理論を個人にあてまめると、親としては、幼児期に子供の非認知的スキルを向上させさせてあげることが、子供の将来の幸せのために「投資効率がよい」ということになりますね。ここでいう「投資」とはお金というよりも子供さんに対する関心や語りかけだととらえてください。もちろん、このブログを読んでくださるような保護者の方は、すでに十分に「投資」されていると思います。

ここからは、我田引水です。私(塾長の高橋)が「小学生と幼児の専門塾AAL」を立ち上げたのも、どうせ塾をやるなら、より人生に影響力のある幼児や小学生の時期にかかわらせていただきたいと考えたからです。

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